――まだ、この塔でやり残したことがある。 焦燥にも似たそんな胸騒ぎを覚えながら、冒険者は再び≪時計塔≫に挑む。 そうして、更なる深淵へ―― |
キャンペーン開始条件 | |
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条件 | ≪時計塔地下≫で1回以上冒険を行う。 |
❖チャプター1
冒険者は、誰にも開けることができなかった扉を開いた。 ――曖昧だった時の流れが一気に空間に流れ込む。 一秒、一分と進む時間は、自分の鼓動に紐づく、本物の時間。 大時計によって作られた時空ではない、本物の時空。 ここは、我々がよく知る世界――シン大陸のどこかのはずだ。 時計塔の地下は、広い洞窟だった。 生命の気配のない、静かで、ただ広い洞窟。 ただ感じるのは、そこに眠る強大な存在の鼓動。 世界が少しずつ蝕まれているような、おぞましい気配。 この下に〈時喰らい〉が眠っているのだろう。 だが、"魔女"はどうなったのだろうか……? |
チャプター進行条件 | |
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条件 | 自分またはPTメンバーが≪時計塔地下≫でイベント「時空制御装置」を発見する。 |
❖チャプター3
その杖は祭壇に祀られていた。 時計を模した複雑な杖。これが話にあった、塔の制御装置だろうか。 冒険者は祭壇の杖を見ようとするが、別のものに目を奪われる。 ――祭壇の下に、誰かが倒れている―― 冒険者は人影に近づく。 それは時計塔の依頼人――黒衣の魔女・ノイアだった。 「……冒険者さん……?」 魔女は息も絶え絶えに冒険者を見上げた。 全身が傷つき、損傷している。床に広がる赤い血は、少しずつ固まり始めている。 目は朧げで、冒険者の姿がはっきりと見えているのかも分からない。 ひと目見ただけで危険な状態であることが分かる。 冒険者は急いで手当を試みた。 ――が、その一切の治療を、魔女の身体は受け付けなかった。 「私の身体は……塔の時空に同期してる……この世界の力じゃ……治すことはできない……」 満身創痍の中、魔女は懐から一振りの剣を取り出した。 《霊剣ディゼルヴァ・エール》。古代神竜語で「時の流れを断つ」という名を持った霊剣。 かつて冒険者が魔女の依頼を受けて取ってきた剣だ。 「……〈時喰らい〉は……私の知る以上に進化していた…… もう、この剣があっても、私の手に負えるものじゃない…… これを……あなたに……もう、あなたしか……」 魔女は震える手で冒険者に剣を握らせた。 その生命の息吹が、みるみる小さくなっていくのを感じる。 「〈時喰らい〉は……その杖から飛べる時空にいる……だから…… 〈時喰らい〉を……討って」 もはや依頼という体ではない。 それは彼女の個人的な"懇願"でしかなかった。 そして冒険者は――
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チャプター進行条件 | |
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条件 | 選択肢分岐Ⅰで分岐Aを選択する。 自分またはPTメンバーが〈時喰らい〉との戦闘に勝利する。 |
❖チャプター4
〈時喰らい〉の身体が崩れてゆく。溜め込まれた幾万・幾億年もの時の流れが散ってゆく。 地面が揺れる。……否、"世界"が揺れている。 逆流する時の流れに、時喰らいを封じていた魔術の世界は耐えることができない。 ――非常に危険な状態だ。冒険者は長年の経験から、瞬時にそう判断した。 脱出の方法は確認できていない。 ……だが、"傷ついた彼女が外で倒れていた"のを鑑みれば、外に出る手段はあるはずだ。 壊せる壁はない。ロープで渡れる崖もない。 空間を囲む虚無は、冒険者の往く手をただただ阻んでいる。 冒険者は知る限りのあらゆる手を尽くすが、空間が破られることはなかった。 ……方法はないのか、冒険者が絶望しかけた時、 崩れゆく〈時喰らい〉の中から、何かが降ってくるのが見えた。 一振りの杖……制御装置の杖だ……! ――魔術師達は、塔によって〈時喰らい〉を封印していた。 ならば、この時空も塔と同じ、魔術によって作り出された時空―― 冒険者は杖を手に取り、そして―― ――時計の針を カチリと回した。 ――――――――…… ※次回冒険日、≪時計塔≫で冒険を行います。 |
チャプター進行条件 | |
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条件 | ≪時計塔≫で冒険を行う。 |
❖チャプター5
塔に足を踏み入れた冒険者。 その瞬間、大きな音が塔に鳴り響く。1時を告げる鐘の音。 「待っていたわ」 訪れた静寂の後、階段から一人の人影が現れる。 「……ようこそ、時を喰らう時計塔へ」 現れたのは、暗い雰囲気を持った黒衣の魔女。 「あなた達に頼みたい依頼が――え?」 時計塔の魔女は冒険者の姿を見ると、その目を丸くした。 「……うそ……どうして……?」 冒険者が手にしている杖は、この塔の制御装置。 本来はこの時空に存在するはずのないもの…… 冒険者は魔女に事の全てを説明した。 塔の守護者を倒し、彼女の試練を達成したこと 彼女の依頼を受け、霊剣を手に入れたこと 時計塔の地下で〈時喰らい〉を倒したこと、 そして杖の力で"塔の時空を巻き戻した"こと―― ――つまり、時が戻ったこの塔において、 冒険者は彼女の前に現れる前に、その目的を全て達成していたのである。 冒険者の話を聞いた魔女はしばらく固まっていたが、少し肩を震わせて 「……そう……よかった…… 本当に…… よかった……」 揺れる声で、一人そう呟いた。 ※次回冒険日、≪リスタル湖≫で冒険を行います。 |
チャプター進行条件 | |
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条件 | ≪リスタル湖≫で冒険を行う。 |
≪リスタル湖≫の湖畔。 冒険者は魔女と共に塔を見上げていた。 「……この塔を築いた魔術師は、きっと誰かが〈時喰らい〉を止めてくれると信じていた。 けれど、誰もそれを為さなかった……それは、どうしてだと思う?」 魔女が問う。冒険者が答えに詰まっていると、魔女は続けた。 「時空を研究しているうちに、彼らは"時間"という概念そのものを恐れたんじゃないかしら…… 時間は万物に等しく流れる。けれど、その終着点はどこにもない。 他の全てが形や性質を変えても、時間の流れだけは永遠。決して止まることはない…… たとえ一つの世界が終わり、新しい世界が始まったとしても、時間だけは流れ続ける。 万物を操れる人間達が最後までコントロールできなかったのが、そういう"時間の無限性"。 〈時喰らい〉は世界の時間を制御するために生み出されたと聞いているわ。 けれど、その本当の理由は別のところにあった。……それが、"時間の無限性"に対する否定。 私には、そう思えるの」 時計塔の魔女は、静かにそう語った。 その出自を呪うことも恨むこともなく、ただ淡々と、先人たち向き合っている。 「……人々が過ぎたる力を求めるのは、案外、そういう"恐れ"なのかもしれないわね」 そうまとめて、冒険者の方を向き直った。 「……冒険者さん。本当に、ありがとう…… あなたが来てくれて良かった」 魔女は穏やかな笑みを見せて、丁寧に頭を下げた。 「……この塔は、じきに消える。〈時喰らい〉が消えて役目は終わったもの だから……この杖はもう必要ないわ。追加の報酬として、あなたにあげる」 そう言って、持っていた塔の制御装置を冒険者に差し出す。 「この杖があれば、この世界でも【時空魔法】を操ることができる。 ……強大な魔術だけれど、あなたならきっと、正しく使いこなせるわ」
End
⚜️おまけチャプター▼
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